日本都市学会第55回大会開催のお知らせ

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1.日時    2008年10月24日(金)・25日(土)・26日(日)

2.場所    神戸国際会館(三宮駅前、神戸市中央区御幸通8−1−6)

3.主催    日本都市学会・近畿都市学会

4.後援    神戸市

5.大会テーマ 都市と観光―日本におけるアーバンツーリズムの可能性―

6.プログラム概要

10月24日(金)午後 エクスカーション

タ方 理事会

10月25日(土)午前 研究発表T

         午後 日本都市学会賞授賞式

            市長講演

            シンポジウム

            日本都市学会総会

         夕方 懇親会

10月26日(日)午前 研究発表U

7.問い合わせ先

〒631−8502 奈良市山陵町1500 奈良大学文学部地理学教室内

  近畿都市学会事務局・日本都市学会大会担当 酒井高正

(TEL&FAX)0742−41−9539
 (eメール)
kinkitoshi@mbn.nifty.com


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日本都市学会 第55回大会テーマ

都市と観光

―日本におけるアーバンツーリズムの可能性―

 

日本都市学会会長   佐々木公明

近畿都市学会会長   實  清隆

開催趣旨

 1980年代に入り、「都市」づくりの重点が「産業・経済」の発展から、「都市」の個性・歴史・文化を活かした地域づくりに向かってきた。観光の分野においても、従来の物見遊山的な観光から参加・体験型観光へとその重点が移り、アーバンツーリズムもその流れに沿って大きく変化している。

 こういった動きに対して、都市が本来もっている文化・個性・歴史的遺産を活かしたり、人間として生きる「悦び」、精神的な豊かさを都市に希求する方向がアーバンツーリズムにも顕れてくる。アーバンツーリズムも、従来のように、都市の名所を「物見遊山的」にみせる段階から「教養・芸術・文化的欲求を満たす」段階へとステップアップする。その都市の持つ歴史的価値、アミューズメント的価値が再評価され、壊れた景観を修景・修復すると共に、空いた町家をギャラリー、芸術教室、憩い・ふれあいの場に活用するなど、アーバンツーリズムがヒューマニスティックな都市的な楽しみを創造する場、地域と触れ合う場として位置づけられるようになってきた。同時に「ニューツーリズム」と呼ばれる動きも登場した。これは、自然とのふれあい・産業観光や疲弊した中心商店街の活性化・まちづくりの切り札としても期待され、実際、幾つかの都市で実績も挙げられている。この動きは活発で、「市民参加型」観光の様相もいっそう強くなり、地場産業を単に見るだけでなく作品をつくったり、スローライフを体験したり、さらには森林浴、里山体験、野鳥の自然復帰観察など自然の持つ「よさ」を活かす「エコツーリズム」と組み合わせたパターンも盛んになってきた。まさに今日、アーバンツーリズムは、このように大きな変革の時期にさしかかっているのである。

  今回、関西を代表する神戸で日本都市学会を開催するが、都市学研究にとって以下のような意義がある。

(1)神戸は1995117日に阪神淡路大震災を経験し震災復興のまちづくりの世界のモデル都市になっている。震災復興を期に爆発的に市民ボランティアの輪が全国に広がり、その後の日本の震災、米国のハリケーン・カトリーナの災害復興やまちづくりに神戸の経験が活かされている。さらに、神戸ルミナリエは震災の暗いイメージを払拭すると共に新しいアーバンツーリズム創造の大きなヒントとなった。

(2)神戸は国際港を持つ都市で、国際交流・異文化を包み込んだ人と人の繋がりのある文化創造都市である。

(3)神戸は、重厚長大の造船・鉄鋼に代わって、神戸空港建設、大学誘致、医療産業都市建設などウォーターフロント開発の先頭をきっている。

(4)神戸は海・六甲山の自然を体験させるエコツーリズム、旧居留地・異人館の町並みを体験させるニューツーリズム、これらを戦略とする「デザイン都市」づくりを実践している。

(5)神戸は、同時に歴史文化の香りの高い京阪神の中核都市の一つを構成する。関西の他の中核的都市、たとえば大阪では「創造都市」の建設を標榜し、水辺の景観や食・笑文化などを活かしたまちづくりが、京都では街並み保存・町家を活かしたまちづくり・アーバンツーリズムがなされている。歴史資源のある関西は、このほか奈良町・「黒壁」(長浜)など景観保存をまちづくりに活かした取組みは無数にある地域である。

 アーバンツーリズムがこのように大きな変革の時期にさしかかっている現在、都市学、観光学の研究者、観光行政担当者、観光業者、観光のまちづくりの実践を行っている市民が、歴史文化の香り豊かな近畿の核都市でトレンディな近代都市であると同時に、大震災も体験した都市「神戸」に集い、「あるべきアーバンツーリズム」を論じ合うことは日本都市学会・都市学の明日の発展にとって極めて重要なことである。都市研究の重点が「物資的な豊かさの探求」から、「精神的な豊かさの希求」に置かれるようになった現在、観光のみならず、クリエイティブシティ論やコンパクトシティ論などの都市理論やこれらの論に基づいた都市づくり、アーバンツーリズムの実践報告が活発になされることが期待される。